生地の森の公式ブログをご覧いただきありがとうございます。
私たちは繊維の街・静岡県浜松市に1967年創業の生地メーカーです。主に麻や綿など天然繊維の生地の企画から製造、販売までを一貫して行っております。
私たちは大手生地メーカー様のような大量生産の規模ではありません。しかし遠州産地の昔ながらの伝統的な手工業の技術を活かし、麻や綿の天然素材本来の持ち味を活かした生地を作り続けております。
私たちは天然素材は生き物のようなものと言っています。その均一化されない原料を熟練した職人の経験と勘によって生み出される生地は、繊細でぬくもりのある独特な表情のある風合いを生みだします。
今回は私たちが原料に扱う「生成り(キナリ)」についてご紹介していきたいと思います。
「生成り(キナリ)」とは、本来色名ではないことをご存じですか?
【目次】
- 「生成り(キナリ)」とは
- 生地の森が「生成り(キナリ)」生地を使う理由
- 「生成り(キナリ)」生地の難しさ
- 「生成り(キナリ)」の生地の価値
- 知ってほしい 生成り(キナリ)生地のメリットとデメリット
- 「生成り(キナリ)」生地のお手入れ
- 生地の森の「生成り(キナリ)」の生地
1.「生成り(キナリ)」とは
「生成り(キナリ)」とは、手を加えないそのままの状態のこと。
以前まで「生成り(キナリ)」は色の名称だと思っていました。しかし「生成り(キナリ)」とは、手を加えないそのままの状態を指すとのことで、色の名前とは異なります。
本来の意味の「生成り(キナリ)」とは、綿や麻など農作物の天然素材のありのままのことで、糸や生地は漂白や染色など、何も加えていない状態のものを指します。
ミシン糸など縫い糸にも生成り(キナリ)とありますが、綿や麻・リネンの生成り(キナリ)とは大きく違います。縫い糸にあるポリエステルという化学繊維の生成りは、白い糸から染色して生成り味の色に加工されたものです。しかし綿や麻・リネンの生成り(キナリ)は原料となる農作物そのもの。本来の生成りは色合いもまばらで生産地や土壌、収穫の時期などにも影響されて、もともと統一されたものではありません。
綿や麻・リネンの天然繊維の糸を良く見てみると、黄味がかった色から茶味に濃い色とさまざまに混ざり合っています。
2.「生成り(キナリ)」生地を使う理由
では生地の森はなぜ「生成り(キナリ)」を使っているのか。それは「生成り(キナリ)」は天然素材そのものだからです。何も加えていない素材そのものから引き出される姿が自然の美しさを形成するからです。
3.「生成り(キナリ)」の生地の難しさ
「生成り(キナリ)」の生地を織る糸とは、天然繊維特有の植物の破片などが混入し均一ではありません。そのようなばらつきのある糸は非常に織りにくく、一度にたくさん織ることが出来ない上に織られた生地にもばらつきが出るため、染色加工にも影響されます。
一般に世の中に多く出回る工業製品は、消費者に認められるため、厳しい品質基準を保たなければいけません。綿や麻の天然繊維に関して言えば、衣料品の繊維製品に使われる生地は、大量の服を色ぶれ、異物、織キズ等なく仕上げなければいけないので、ばらつきのある「生成り(キナリ)」の糸は使えないのです。そのために何をするかというと、化学薬品を使って幾重にも加工処理がさればらつきを無くした漂白して白くした糸が使用されます。ばらつきのない均一化された糸は織りやすくなり生産効率も上ります。生地は均一できれいな面(ツラ)に仕上がり、染色・加工をするにおいても非常に安定しますので、高い品質基準を保つことが出来て消費者に提供することが出来るのです。
綿や麻の天然繊維は言ってしまえば素材本来が持っている特性をほぼ失ったものこそが高品質とされているのです。
4.「生成り(キナリ)」の生地の価値
しかし生地の森はその逆をいっているといっても過言ではありません。天然素材の本来の性質を壊さないよう、最小限の加工に止め、あえて前処理の漂白をしないばらつきのある「生成り(キナリ)」を使います。
「生成り(キナリ)」の糸は本来天然の農作物ですから黒っぽいものや茶色っぽい植物の破片などが混入します。良く見るとささくれが入っていたり一本の糸の色もまばらだったり、触ってみると太さも均一ではありません。そのようなばらつきのある糸は非常に織りにくく、生成りの糸を織れるのは、素材の特性を見極めた熟練した職人に限られます。
丁寧に織り上げた生地でも欠点は出やすく、生地にもばらつきが出るため、後加工の際も非常に不安定に現われたりもします。それでも、そのばらつきこそが何とも言えない豊かな表情を形成し独特な雰囲気を生みだすのです。品質の高さを求めるために化学薬品を使って加工処理を幾重に行われた生地では本来の味は絶対に復元しません。
実際に今「生成り(キナリ)」の生地を織るのは日本国内だけのようです。効率がどんなに悪くても、品質が劣るといわれても、そこに変えられない素材の味や雰囲気に価値があるとわたしたちは信じているからです。
5.知ってほしい 生成り(キナリ)生地のデメリットとメリット
〈デメリット〉
- 強力な化学薬品の処理、漂白も染色もしないため、黒や茶色っぽい植物の破片などが混入してるので、生地面には色味や質感にばらつきが表れやすくなります。
- 本来天然の農作物なので、生産地、土壌や収穫の時期などに影響されて色合いはさまざまに現れます。統一された色ではありません。
- 生産ロットの違いで色味の差も現われます。継続してお使いの場合は色合いの違いをご了承ください。
〈メリット〉
- 漂白も染色も強力な化学薬品の処理がないため、身体に安全です。
- 天然素材本来の自然な風合いと素朴な味わい、雰囲気が楽しめます。
6.「生成り(キナリ)」生地のお手入れ
お洗濯の際に、蛍光増白剤の入った洗剤を使用して何度も洗濯を繰り返すと、白色に変色し自然な色素を損なう原因になりますのでご使用はお避けください。
7.生地の森の「生成り(キナリ)」
ここからは生地の森が作り続けてきたロングセラー生地をご紹介させていただきます。
┃ PICK-UP ITEM-1 ┃
洗いこまれたベルギーリネン 25番手・40番手・50番手(IN50093)
洗いこまれたとはフラットの生地を後からワッシャー(しわ加工)を施してシワ付けしているのではなく、生機(キバタ)からダイレクトに余分な張力や圧力など負荷を与えないよう一つ一つ手作業の工程でゆっくりと時間をかけながら仕上げて行きます。こちらは上質なベルギーリネンの糸を使い遠州産地で平織りにした生地で、素材本来の自然な表情が無作為な微妙なしわやムラ感に現れ、ふっくらとソフトな柔らかさとサラリとした心地よい風合いが生まれております。
生成り(キナリ)は素材本来の色、オフホワイトは生成り(キナリ)を晒して白にしていますが、もともとのリネンの生成りは茶味が濃いので真っ白ではありません。こちらのベルギーリネンは黄味よりの白であたたみを感じさせます。
┃ PICK-UP ITEM-2 ┃
洗いこまれたラミーリネン25番手(IN50581)
こちらはラミーリネンという原料を使っております。
ラミーリネンとは、ラミー(苧麻)とリネン(亜麻)の2種類の原料がバランスよくブレンドされた混紡糸で日本の高い紡績技術によって作られています。
この生地は25番手の混紡糸を使い遠州産地で平織りの生地に織り上げました。ラミーリネンの生機(キバタ)の状態は毛羽強く、日本国内の工場で毛焼き(ケヤキ)という表面の毛羽を焼いて取り除く下処理を行います。このひと手間で下地を整えることでハリこしのしっかりとした中にふっくらとした柔らかさが生まれしなやかな風合いに仕上げてあります。
素材本来の特性を活かすべく丁寧に洗い込みをかける特殊な染色加工により、自然にランダムに出るシワ感が特徴的で、自然素材らしい粗野な味わいが魅力的な素材です。
┃ PICK-UP ITEM-2 ┃
洗いこまれたラミーリネン40番手(IN50588)
┃ PICK-UP ITEM-3 ┃
洗いこまれたリネンワッフル25番手(IN50725)
こちらはワッフル生地と言い四角い凹凸が特徴的な生地です。
上質なベルギーリネンの25番手の糸を使い遠州産地のドビー織機で蜂巣に織られた生地になります。
その生地を職人による手工業の技術でここまで立体的でふっくらとした風合いに仕上がっております。
リネンは吸湿性と速乾性にも優れておりますので、こちらのリネンワッフルはタオルやシーツに役立ちます。ふっくらと柔らかく心地よい肌触りの生地をぜひ身近なものにお役立てください。
自然素材本来のピュアで素朴な表情。ぬくもり感漂う雰囲気と味わいが伝われば幸いです。
最後に…
「生成り(キナリ)」の生地は、天然の素材そのもの。
生地の森では、あえて均一にする化学薬品の処理加工をせず、素材本来の味を大事にしています。 漂白も染色もしていない素材本来の色を生かしておりますので、生産地の日照時間や天候、収穫時期によって色味の変化が出ることがあります。植物の破片が生地の表面に残り黒っぽかったり、茶色っぽかったり、同じ生地の間でも色合いのばらつきが出る場合がありますが、品質には問題ありません。
天然素材でつくられた「生成り(キナリ)」の生地は、その自然な風合いと素朴な味わいが魅力です。それを形成する「生成り(キナリ)」の生地の不均一な質感や表情に対しては、どうかご寛容になっていただけたら幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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