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「リネンウールの水通しと地直し」
裁縫をされる方でしたらよくご存じかと思いますが、洋服等をお仕立てする前に、
「生地を整える作業として、水通し(地直し)」があります。
当店にも「このリネンウールは水通しが必要ですか?」とお問い合わせをいただくことがあります。
そこで、今回はリネンウール生地の水通しと地直しの手順を動画にまとめたり、
水通しやお洗濯前後の比較を実践してみました。
目次
生地は「仕立てる前に必ず水通しをしなければならない。」
そう思っている方は多いのではないでしょうか。
では、なぜ水通しをするのでしょうか?
・生地の縮みを落ち着かせる
・生地の歪みを整える(地直しする)
・糊を落とす
主に、このような理由が挙げられるかと思います。
当店で取り扱う生地は、アパレル用に企画、製造しているので、すぐに裁断し、製品化されるように作られています。
また、糊付けなどは行っておりません。
そのため、届いた生地をそのまま仕立てることができます。
ただ、ここで注意していただきたいのが、綿や麻など天然繊維の生地は、水洗いをすると多少縮むということです。
これは、既製品の洋服なども洗えば縮みが生じるように、当店の生地も同じように縮むと考えていただければ分りやすいかと思います。
また、目の粗い生地などは、地の目が歪みやすいです。
生地を見て、もし地の目が歪んでいると思われたら、地の目を整えていただくことでキレイに仕立てることができます。
@大き目の容器にたっぷりの水を張り、生地を単体を浸します。
中まで浸透させるために生地を開いてまた浸します。これを全体が浸かるまで繰り返します。
生地の表面は浸透していても、中までは行き渡っていませんのでしっかり開いて浸します。
A生地全体に水が染み渡ったら十分です。ムラがないかよく確認してください。
B全体的に浸透したら、余分な水気を取ります。
雑巾のように絞るのではなく、手で押さえるようにして、余分な水気を取ります。
C乾いたバスタオルなど大きめの布に包んで、さらに水気を取ったら水通しは完了。
この後は生地を広げて平らにして、陰干ししていきます。
リネンウールは、ウールが含まれますので、水通しやお洗濯について、迷われる方も多いかもしれません。
そこで、リネンウールを水通しすることでどのように変化するか調べてみました。
下記で行った水通し方法は、生地を30分程水に浸し、手で軽く水気を絞り、陰干ししただけの簡易的なものになります。
特にアイロンなどは当てていません。
使用生地:IN50512 洗いこまれた綾織リネンウール
カラー:ブラック
【結果】
タテ幅…5mm程縮みました。(縮み率 約1%)
ヨコ幅…変わりませんでした。
【感想】
水通し後は、水気を絞りハンガーにかけましたが、生地からわずかに水が落ちるくらいの状態での陰干しとなりました。水の重みからか、1%程の縮みでしたが、洗濯機で長く脱水すれば、もっと(2〜3%程)縮むのではないかと思います。
ここで、アイロンを当てたら、どうなるのかが気になりました。そこで、同じ生地を再度水通しして、半乾きの状態でアイロンを当ててから、サイズを測ってみました。結果、縮みはなく、逆に生地が少し伸びていました。
水通しをしただけでは、地の目がきれいに揃ったわけではありません。そこで、生地の歪みを整えるために、水通し後に地直しをしてみました。
@耳端をハサミで切り落とします。
水通し後、陰干しして半乾き状態となった生地を広げ、
耳端をハサミで切り落とします。
Aヨコ糸を抜いていきます。
下から2〜3cmのところを横向きにハサミで切り込みを入れ、ヨコ糸を抜いていきます。
B地の目を整えます。
ヨコ糸を抜いたところがスジに見えますので、
このスジが真っ直ぐになるように、生地を左右斜めに引っ張り、
地の目を整えます。
C中温程度に温めたアイロンを当てて、生地を落ち着かせます。
※
高温のアイロンを強く押し当てると白化(白くテカる)やアタリが付いて、繊維を傷める原因となります。
※動画では、生地の左半分しか地直しをしておりませんが、実際に行う際は右端まで行い、最後に、ヨコ糸を抜いた箇所(スジ上)にハサミを入れて余分を切り落として使います。
前述の通り、当店で取り扱う生地は、アパレル用に企画・製造しているので、
すぐに裁断し、製品化されるように作られています。
実際にリネンウール生地を水通しせずに製品にし、お洗濯を行うとどのような変化があるか比較してみました。
使用生地:IN50561 綾織りベルギーリネンウールビエラ40番手
カラー:キナリ
【結果】
着丈…1cm程縮みました。(縮み率 約1.6%)
肩幅…変わりませんでした。
【感想】
こちらは、ブラウスということで、生地のみと違い、カサがあるので水通し後の水を絞るのが、
やや大変でした。水を絞った後、ハンガーにかけると、少し水が落ちる程度まで絞りました。
こちらも水の重みからか、着丈1.6%程の縮みでした。
使用生地:IN50624 平織りラミーリネンウールキャンバス25番手
カラー:カーキグリーン
【結果】
着丈…1cm程伸びました。(伸び率 約1%)
肩幅…変わりませんでした。
【感想】
まさか水通しで生地が伸びると思いませんでした。
これは、比較的ボリュームのあるワンピースだったため、手で水気を絞るのはかなり大変でした。
ハンガーにかけると、水がボタボタと流れ落ちるほどで、かなり水気がある状態で影干ししたので、水の重みで縮まなかったと思われます。
軽く水気を切ってから影干しすれば、リネンウールはそれほどの縮みは生じないということが分かりました。
確かにウールのセーターなども、脱水しすぎると縮んでしまいますよね。
脱水を極力短くするのがポイントかもしれません。
また、ヨコ方向は、ほぼ縮まないので、気にされなくて良いかと思います。
以上、リネンウールの水通しと地直しについてまとめてみました。
今後の作品作りの参考にしていただけたら幸いです。
リネンウールの特徴や取り扱い方法について詳しく知りたい方は、
ぜひ「リネンウールの特徴やお洗濯、お取り扱い方法」をご覧ください。
文字通りリネンとウールを掛け合わせた素材です。
水通しとは
生地の縮みを防ぎ、仕上がりをより安定させるために、お仕立て前に一度水に浸しておく作業のことです。水洗いが可能な素材に行います。
地直しとは
美しく仕上げるために、縫い始める前にアイロンで布目を真っ直ぐに整え、生地の歪みを整える作業のことです。